社内恋愛のススメ



幸せにするよ。


誰よりも、お前を。

何よりも、有沢のことを。



守ってやりたい。


男勝りな彼女は、自分の傷を隠そうとするから。

何もなかったみたいな顔をして、自分の傷を隠したがるから。



無理をしたがる彼女を支えてやりたい。

俺の手で、有沢を支えてあげたい。


そう決めていたのに、それを叶えることは出来なくなってしまったのだ。







大好きな彼女が、俺の前から消えた。


理由は、支社への転勤。

本社勤務から転属になるのだと、部長に聞かされた。


転属とは、名ばかりのもの。

事実上の左遷だ。



左遷されてしまった原因が、笑える。


また、あの男。

上条さんだ。



どこまで、俺と有沢に関わってくるんだよ。

どこまで、有沢のことを追いかければ気が済むんだ。


止めてくれよ。

俺から、有沢を奪わないでくれ。


隣にいることさえ、もう俺には出来ないのだ。




「私が転属になる理由は、不倫なんだよ。………相手が誰か、分かる?」


俺ではない男と、関係を持ったと言う有沢。


分かってるよ。

その可能性があるのは、アイツだけ。


有沢があんなにも恋い焦がれていた、あの男だけ。



「嘘だろ?あんなの、嘘だ………。」


嘘だったなら、どんなに良かったことだろう。


だけど、現実はそんなに甘くなかった。

俺にとっても、有沢にとっても。



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