社内恋愛のススメ



上条さんは、私に向けて視線を送る。

見られているこっちの方が避けたくなるほど、真っ直ぐな視線を。


いつもとは違うのは、その視線に熱を感じること。



ほんのり熱っぽい。

微かに潤んだ瞳で、私をじっと見つめてくるからタチが悪い。


熱い。

見られている私まで、熱くなる。


焼け焦げてしまいそう。



「………!」


そっと、私の頬に触れる手。


いつも冷静で。

スマートで。


冷たいものだと思い込んでいた上条さんの手は、思っていたよりもずっと温かい。



触れるだけで、頬が火傷する。

内から発する熱と与えられる熱とで、焦がされていく。


私の頬に触れながら、上条さんはこう囁いた。



「君と朝まで一緒にいたいと言ったら、迷惑かな?」


君と朝まで。


君という言葉が指しているのは、私で。

間違いなく、私のはずで。



上条さんの言葉に、私の心臓が跳ねる。


多分、今日の中で1番。

高く飛び跳ねて、元の位置に着地する。




(わ、私だよね?)


私と朝まで。

上条さんと私が、朝まで一緒にいるってことだよね?


それは、つまりそういうことで。



仕事をするんじゃない。


今日は休み。

完全なる、プライベート。



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