社内恋愛のススメ



「実和………。」


潤んだ瞳。

熱っぽい声で私の名前を呟いて、上条さんが私の体に触れる。


首筋。

胸。

お腹。

そして、足。



私の全てに触れる。


体だけじゃなくて、心にも。



ずっと願っていた。


上条さんと、こういう関係になれること。

上条さんの、特別な存在になれること。



その願いが、ようやく叶ったんだ。


怖いものなんてないよ。

上条さんさえ、私の傍にいてくれれば、何も怖くない。



「………んっ、やぁ………」


重なる唇。

ほんの少しの隙間から、忍び込む舌。


絡まり合う。

お互いが溶けてしまいそうなほどに、濃く絡まる。



「実和………、こっち向いて。」


恥ずかしさから顔を背ければ、上条さんはそう言って私を正面に向かせようとする。


恥ずかしい。

目を合わせることさえ、躊躇う。



好き。

大好き。


出会ったあの日から、彼のことが好きだった。



「好き………。大好きです、上条さん………。」


離れていた間も、心のどこかにいた。

会えなくても、きっと忘れてなんかいなかった。


4年分の想いを込めて、私は愛を伝えた。








「実和。」


誰?

私を呼んでいるのは、誰なの?


ほら、まただ。



「実和、起きて。」


もうちょっとだけ、眠っていたい。

この余韻に浸っていたい。


だって、とても素敵なことが起きたから。

素敵な夢を見ていたから。


だから、もう少しだけ。



< 67 / 464 >

この作品をシェア

pagetop