彼女のすべてを知らないけれど

「ミコト! そうか、ミコトのせいだ! そうに違いない!」

俺は、知り合って日の浅い男のことを思い出した。

「ミコト! どうせどっかから見てるんだろ? これはどういうことか説明しろぉっ」

ミコトは、こんな緊急事態の時に限って現れやしなかった。

「絶対、ミコトが何かやったんだ……」

うらめしそうにブツブツ言い、ベッド を一瞥(いちべつ)する。

「うっ……!」

シーツに隠れているとはいえ、少女の体は女性のそれそのもので、俺は目のやり場に困った。

スラリと伸びた足。柔らかそうな二の腕。 シーツに包まれているのであろう女性的な体つきは、見なくても想像できた。

最近起きた出来事の中で、ミコトとの出会いに負けないくらい刺激的な瞬間で ある。

「っていうか、この子はどっから入ったんだ? 鍵は閉めて出たし……。

ミコトのせいだとしても、何で服着てないんだろ?」

緊急時にも冷静な態度を崩しません的な表情を無理矢理作り、それっぽい独り言をつぶやくことで、俺は胸の鼓動をご まかした。
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