等身大の愛唄

杏栖を送った帰り道。

これから、俺はまた電車に乗って来た道を戻る。


さっきアイツに言った、「俺ん家だって、この近くだし。」つーのは嘘。



杏栖に心配されるほど、俺はヤワじゃねぇし。





電車に乗って、さっきの事を思い出す。

ふと見えた、杏栖の顔は何でか知らないけど少し赤らみがかかっていて。
それを隠して、普通に俺に接しているつもりらしいけど……


軽く、可笑しい人になっている。



「…………………ぷっ」



それを思い出すと笑えてくる。

家に送りついた後なんか



「ありがとうごじゃりましたのです。」



って、変な日本語になってない言葉を並べてたし。

いくら何でも、動揺しすぎだろっ!って、心の中で笑った俺。


でも、昔の俺に比べたら、これは進歩。




俺がストリートライブを始めたのは、アイツに気付いてもらうためだし。

気付いてもらわなきゃ、意味がねぇんだよ。




―――中3の夏。
俺が初めて、アイツに会った。


風になびく黒く綺麗な長ーい髪に、ぱっちり二重の大きな瞳。
長い睫毛に………


んまぁ、いろいろ惚れる要素はあったんだよ。



で、俺は一目惚れして…





今に至っている。

ここまで来るのにも結構と苦労が絶えなくて…




でも、こういう事があるなら。

良かったとかって思えるんだよな。

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