等身大の愛唄
1章 高1の春

――夢を見る。
 いつも同じ夢。


泣いているあたしの目の前に手を差し伸べてくれる

君が居て。

あたしはその手を取る。
そして、君は笑うの。

あたしは、それを誰だか知っているの。

もちろん、名前だって知っている。


なのに、名前が思い出せないの。

けれど、あたしは呼ぶ。



「……や…」



でも、呼んだ所で目が覚める。



――――――――…
――――…



あぁ…またこの夢か。

今日も聞きそびれちゃたなぁ~。



「杏栖!あんた、いつまで寝てるのよ!」



お母さんが、凄い血相であたしの部屋に入ってきた。

時計を見ると、8時20分を指していた。



「な゙ぁ゙―――――――――――っ!!!!」



それを見て、あたしは奇声を上げる。



「もぉ―――っ!!!何で起こしてくれなかったのよ!」

「起こしたけど、あんたが起きなかったのよ。」



お母さんの呆れ顔を尻目にしながら、バタバタ支度をする。



「いってきま――っす!!!」



あたし、近藤 杏栖(コンドウ アンズ)は多分。
今までで一番本気で走ったと思う。



けど………
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