アウト オブ ザ ブルー

「誰かを傷つけてまで自分が幸せになりたいとは思わないから…、やっぱこうするしかないっていうか…」




そこまで聞くと、ふいにキーチのことが頭をよぎった。


「誰かを傷つけるって…、それ、キーチのことを言ってるの…?」




コージさんの横顔からは笑みが消えていた。



彼の言葉に、私は以前自分も同じようなことを考えたことがあったと思った。




去年妊娠が発覚したとき、それをキーチに伝えようと思っていたのだけど、


彼が深雪ちゃんと私の板挟みになって苦しむことを考えたら、自分が身を引けばすむ話だと思って、


結局妊娠したことを言わなかった。



あれはあれでまた新たな不幸を生んだだけだったけれど。




それをコージさんに話すと、彼は「なんだ、みちるも意外と大人だったんだ」と茶化した。


「バカにしないでよー」と反発しつつ、私は彼に言った。


「でも、深雪ちゃんはコージさんが迎えに来てくれるの、さっちゃんと一緒に待ってるよ…?深雪ちゃんに連絡取ってあげてよ…」
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