キミの背中。~届け、ラスト一球~
希望を亡くした足取りで教室を出て、靴箱まで歩く。
廊下に鈍く響いているのは、吹部の合奏の音。
相変わらずまとまりがなく、リズムもバラバラ。
聞いていて不愉快になる音楽だ。
それなのに、あたしの一部に恋しさが生まれつつある。
あたしは、一体どうしたいの?
ベッドの下に放置したままのトランペットは、中学卒業して以来一度もあけていない。
トランペットに触れたのだって、3日前長谷川さんに誘われた時が1年半ぶりだ。
久しぶりにトランペットの重みを感じて、マウスピースを唇に当ててみた。
だけど、ただ息が通るだけで唇が震えることなく終わってしまった。
中学の頃はあんなに音を操っていたのに……。
音を出すことなんて、何も難しい事じゃなかったのに……。
今では、あの頃の感覚を殆ど忘れてしまってた。
どうやって音を出していたのか。
どうやって音楽を表現していたのか……。
もう、あたしの中から薄れていってる……。