くすんだ空を見上げれば
「ちょっと待っててね」
神谷は少し離れて誰かと電話をしていた。
その間、家に入ればまたつまらない日常へと戻る事を考えていたら嫌気がさした。
嫌だな…。そう心底思った。
神谷が電話を終えて戻って来ると同時に玄関が開いた。
「楓!」
何でか紅葉が出てきた。
このタイミングで…
神谷と居るのに気まずい…。
一人で焦っていると神谷が口を開いた。
「悪いな!
家に居て良かった」と。
それは紛れもなく紅葉に向かって声を発していた。
「えっ!?何??」
訳分からない私。
「学校同じだとは思ってたけど、まさか楓の友達が神谷だとはな!」
笑いながら門を開けて話す紅葉も紛れもなく神谷へ言っている。
紅葉は私の手を引っ張って何処かへ歩き出したが、私はこの状況を理解出来なくてただ黙って二人の会話を聞いていた。
「あ、神谷は俺の大親友なんだよ!」
やっと紅葉が私を見てそう言った。
「まさか、かえちゃんの兄が紅葉だと思わなくてビックリしたよ!!
今日送ってきて良かった!」
神谷は嬉しそうに私を見た。
やっと理解してきた。
この二人は元々友達だったんだ…
しかも大親友…。
それは良いけど…
何でかもう神谷と遊べなくなる気がして寂しく思えた。
兄と仲良いなら私とはもう…。
無性に寂しさが込み上げて
気付けば紅葉に引っ張られてた手を離し
神谷のTシャツの裾を
キュッと掴んでいた。