密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 法学部の隼人と付き合い始めて二ヶ月が過ぎた。知識が豊富で私の知らない事を沢山知っている爽やかな好青年。

 友達に紹介され、知的で美的なその姿に一目惚れしてしまった。

 片想いだと毎夜胸を焦がしていたら、隼人に告白された。

「美里ちゃん、僕の彼女になってもらえませんか?」

「はいっ……」

 両想いって素晴らしい。

 心は晴天。

 

 どんな時でも傍に居たいほど大好き。……でも、着いていけない事がひとつだけある。

 それはマラソン。

 映画館や図書館が似合う草食系のインドア派で文学部の私と趣味が合いそうに見えたのは錯覚? 初デートは博物館で『地球の構造と宇宙の成り立ち』だったのに。

 隼人は毎朝五時に起きてクラシック音楽を聴きながら多摩川の土手を走っている。


 私はマラソンも早起きもどちらもアウト。家を出る十分前まで寝ていたい。すっぴんでもいいなら三分前まで寝ていたい。三分あれば、顔を洗って、歯を磨きながら髪をとかせる。

 平凡でありふれた朝が一番だ。


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