密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 嗚呼、あの時からずっと置いていかれたままだったんだ。呼吸も鼓動も。

 だからこんなにも嬉しい。

「僕、都民マラソンに出るんですよ」

「えっ、私もです。でも完走できるかどうか……」

「大丈夫。ゆっくり行きましょう」

 こうして隣を走ってくれる人がいる。

 その人と呼吸や鼓動が同じペースになっていく。

 さっきよりスピードを上げて走っているのに苦しくない。不思議……。

 多摩川の流れも穏やかだ。



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