密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 そうそう。中学生の時、同じクラスの安住くんの事が好きだったんだ。

 好きで好きで、学校で会うだけでは足りなくて、同じ塾に通って、安住くんの姿を左斜め後ろの席からちらちら見ていた。

 勉強など手につかなかった。シャーペンは手に持っているだけ。消ゴムは机の上に置いてあるだけ。

 視線の先にはいつも安住くん。

 だから、全く成績が上がらなくて、塾をやめさせられたんだった。

「やめたくない」

 と、泣いたけど頑固な父の決断は変わらなかった。

 今思えば、申し訳ない。当時、塾の月謝がいくらだったか知らないけど、父が土木現場で汗を流して手にしたお金を無にしていたのだから。



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