密と蜜～命と共に滴り堕ちる大人の恋～
　私は両親に声を掛けずにそのまま東京へ帰った。

　自分の身体のメンテナンスをしなければならない。私も見つけたいから。人生を共にできるパートナーを。

　明日、病院へ行って勇気を出して打ち明け、相談しよう。

　睡眠薬とアルコールとトラウマから逃げ、陸橋から飛び降りるのではなく、睡眠薬とアルコールとトラウマと向き合って上手く離れる為にどうしたら良いのかを。

　私の力だけではどうにもならないから医師の力を借りて立ち直ってみせる。　

　明日で四十歳。まだ私の人生は終わりではない。

　まだ間に合う。

　まだ間に合う。

　国枝さんと過ごした三年間を無駄にはしない。

　鈴は綺麗な音を『りん』と鳴らすためにある。私の鈴はこれから鳴る。

　これからなんだ。

　今はただそう信じていたい。

　国枝さん、どうか私を見守っていてください……。



　いつか母に「生んでくれてありがとう」と言える人になりたい。

　いつか父に「育ててくれてありがとう」と言える人になりたい。



　母が父の足の爪を切っていた、あの陽の当たる縁側で……。




【夫婦愛＊ＥＮＤ】



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