密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~

 ふわりふわり


 視線の上、青い空のキャンバスに真っ白な雲が浮かんでいる。

 身を寄せ合っているクジラのような雲が二つ、風で泳いでいく。


 日曜の午前十時過ぎ。公園の芝生の上で寝転がっている私と晴斗。


 ふわりふわり

 とろんとろん


 雲の流れに合わせて微睡んでいく。

 空がたったひとつ、海がたったひとつしかないように雲の形もたったひとつ。

 微睡みながら柔かそうなクジラの背に乗った。


 クジラは言った。

「この空のどこかではミサイルが飛んでいるんだ」と。

 そうか。そんな現実が存在しているんだ。

 ミサイルを飛ばす余裕が、暇があるなら愛の種を蒔こうよ。愛を育てようよ。

 それは無償の愛でなくてもいい。見返りを求めてもいいと私は思う。人間は戦争を引き起こす。無償の愛なんて言えるほど綺麗じゃない。


 空がたったひとつ、海がたったひとつしかないように雲の形もたったひとつ。

 命もたったひとつ。




< 297 / 304 >

この作品をシェア

pagetop