密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~

 ここがこれからも平和でありますように。

 『ここが』と自分のいる場所を一番に思ってしまう私は悲しい人だ。クジラがそれを教えてくれたから、ミサイルなど飛ばない世界になりますようにと、まだ見えぬ星に願いながら目を覚ました。



 ちょうどお昼。

 二人でおにぎりを頬張る。

 大きな口を開けて、無邪気に笑いながら。


 もしこれが、まだ付き合い始めたばかりの彼氏、武史さんとだったら早起きして、たまご焼きやハンバーグ、カレーコロッケ、ナポリタン、ポテトサラダ、彩りも考えて手の込んだお弁当を作るところだけど、晴斗ならおにぎりだけで平気。


 多少不恰好でもおいしそうに食べてくれる。だから一緒にいるとすごく安心できるの。

 具はツナマヨと昆布。

「うまい!! ツナマヨ最高ー」

「でしょ。昆布もあるよ」


 おにぎりを食べた後は、また微睡んで、とろんとろん。

 そうか。食べ物があるって幸せな事なんだ。おにぎりは手を握り合うような愛の塊。それは不格好でもいい。


 ぷにぷにした感触がして、ちらっと見ると、三毛猫が気持ちよさそうに二人の間でゴロンと寝ていた。その前足の肉球が私の左腕に当たっている。にゃんて気持ちいいの。


 とろんとろんは人間も猫も一緒なんだね。


 私がその背を撫でると、ありがとう、邪魔しないよ、というように日陰へと歩いていった。

 そっちに三毛猫さんの彼氏か彼女がいるといいな、と想像しながら、私はまた、とろんとろん。




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