密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 彼は化学記号の書いてある、私には全くわからない分厚い本を迷いなく手に取ると、いつもの席に座った。

 彼とのデートはいつも図書館。図書館の匂いが好きだと言う彼。図書館の匂いが苦手だと思う私。

 私は新書のインクの匂いが好き。

 そんな気持ちを窮屈な部分に押し込めるように隠したまま、フランスの恋愛小説が並んでいる棚に向かう。


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