Love the love.
Love the love.


 付き合っている女の子が目の前に正座して座り、不機嫌な顔で俺に向かって唇を尖らせる。

 マスカラをたっぷり塗ったまつ毛でパチパチと瞬きをして、俺をじっと見ているはずだ。

 見てなくても判る。俺は雑誌から視線をあげないままで彼女が次の行動にうつるのを待った。

 彼女が正座をする時、そして前に座る時はいつでも唇を尖らせている。今まではそうだった。

 そして、次のデートの約束だとか、誕生日に欲しいプレゼントだとかのおねだりが始まるに違いない。

 その顔は十分可愛い。多少計算も見えるけど、でも十分可愛いよ。

 彼女が息を吸い込む音がした。

「ハルはさ、ちゃんとあたしを見てくれないよね」


 ―――――――――おや?


 彼女の部屋で、俺は見ていた雑誌から目を上げる。

 今まで付き合ってきた女の子からの教訓、その1。『女性が話し出したら取り合えず視線を向けろ』。

 だけどちょっと予想と違ったな。

 こういう台詞が出てくるとなると、次は―――――――――――

 彼女は膨れっ面でこっちを見ている。

 もう少しでため息をつきそうだった。だけどその代わりに、俺はにっこりと微笑む。


< 1 / 30 >

この作品をシェア

pagetop