炭酸アンチヒーロー番外編

君と雪に願うこと

「──あ、」



ふと窓の外の景色に気づいて、私は思わず呟いた。

まだ湯気のたちのぼるマグカップを両手で持ったまま、座っていた毛足の長いじゅうたんから立ち上がる。



「……なに、雪?」



急に窓へと近づいた私を見て、同じように彼が後ろに立った。

自分よりもだいぶ高い位置にあるその顔を見上げると、なんだか不機嫌そうに眉を寄せていて。



「ふふ、ヒロくんは、寒いの苦手だもんねぇ」

「いいことねーだろ。動きにくくなるし、厚着するのも面倒だし」

「えー?」



くすくす笑いながら、背中を彼の胸板に軽く預ける。

背中と言っても、私と彼はかなりの身長差があるため、ちょうど私の後頭部が彼の胸にあたる状態。

触れているところから、じんわりと、彼のぬくもりが伝わってくる。



「でも確かに、ヒロくんは夏が似合うからなぁ」

「……野球?」

「ん、野球。でしょ?」

「まあな。つーかさ、まおの中で、俺のイメージってずっと高校生の頃から変わんないわけ?」



それはそれで微妙なんだけど、なんて若干ふてくされ気味の彼に、私はまた笑う。
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