炭酸アンチヒーロー番外編
──うん。確かに、私の中の彼は、出会った高校生の頃が基本だけど。

でもね、例えば君が、自分は普段飲まないココアを、私のために切らすことなく家に置いてくれていることとか。

ふとした瞬間の、私の全部を包み込んでくれるような微笑みとか。

本当はいっつも、“男の子”からどんどん“男の人”になっていく君に、ドキドキしてるんだよ。



「……ヒロくん、」



だいぶぬるくなったココアを窓際に置き、少しだけ身体をひねって彼と視線を合わせる。

名前を呼びながら軽く彼の胸元を掴むと、私の言いたいことがわかったのか、ふっと目元を緩ませて身体を屈めた。

頬に大きな手が添えられて、唇に、やさしく彼のそれが重なる。



「……ん、」



ぬくもりが離れてそっと目を開けると──目の前には、まるで愛しいものでも見るかのような、ひどくやさしげな表情。

……ほら、今だって。そんなカオ、高校生の頃はしてなかったよ?
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