炭酸アンチヒーロー番外編
「……てるてるぼうず?」



思わず声にしてしまった俺に、こくん、と蓮見が小さくうなずいた。

彼女の手の中にあるそれは、白い紙におそらくティッシュペーパーなどが詰められているのであろう、典型的なあの形で。

ちゃっかり、黒いマジックで笑顔まで書かれている。

それを受け取りながら、今度は違う意味で首をかしげた。



「なんでまた、てるてるぼうず……」



しかも、わざわざ俺に隠してまで。

そんな思いで呟いた俺に対し、なぜか彼女はまた「う、」と言葉をつまらせる。

するとここで、それまで俺らの様子を何も言わず傍観していた新井田が、にこやかに口を開いた。



「それねぇ、まおが辻くんのためにって」

「は、」

「ちょっ……沙頼!」

「それじゃあ、私たちはこのへんで~」



言いながら新井田と坂下がそそくさと横を通り過ぎ、軽やかに手を振りながら教室を後にした。

「がんばれ~はすみん!」って……なんのこっちゃ。
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