炭酸アンチヒーロー番外編
「ヒロさぁ、もう蓮見さんとキスした?」



ガチャン。

唐突すぎる悠介のひとことで、それはもう見事に、俺は持っていたケータイを床に落とした。



「……悠介、てめぇ……」

「あらあらあら、その反応は図星ー? 意外と純情なのね~、ヒロくんってば」



口元に片手をあて、気持ち悪いお姉言葉で笑う悠介に、俺は心底げんなりしつつケータイを拾い上げる。

ありえねぇ。いろいろありえねぇな、コイツ。

幸い、部活終わりの騒がしい部室内で特別俺らの会話を気にする奴もいないが……それにしたってコイツのコレはひどいと思う。



「付き合いだしてー、もう2週間くらいだっけ? がんばるねーヒロ」

「……うっせ」

「あ、もしかして今ケータイいじってたのって、蓮見さんにメールとか? 何、早めに部活終わったから一緒に帰んの?」

「………」



無言でロッカーの扉を閉めた俺の態度を肯定ととったのか、やけににこやかに笑った悠介は「グッドラック」と左手を振る。

マジムカつく、と心の中で毒づいた俺は、渦中の彼女と待ち合わせるべく、足早に部室を出て生徒玄関へと向かったのだった。
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