炭酸アンチヒーロー番外編
「──それでね、そのとき私、ついうたた寝しちゃって……」

「ふ、蓮見らしいな」

「ええー、その言葉はあんまりうれしくないなぁ」



他愛もない話をしながら、私と辻くんは手をつないで帰り道を歩く。

くすくすと笑う私に、彼も小さく微笑んでくれている。

ああ、しあわせ、だなぁ……。


そんなふうに歩いていたら、いつの間にか私の家の前にたどり着いていた。

どちらともなく、歩みを止める。



「……着いちゃった」

「……うん、」

「………」



ほとんど無意識に呟いた私の言葉に、辻くんは律儀に返事をする。

それきり、ふたりの間に微妙な沈黙がおりた。


……どうし、よう。私の家に着いたんだから、このつないだ手をほどいて、さよならって、言わなきゃいけないのに。

でも、なんか、このまま離れたくない……。


つながった手もそのままに、ぐるぐるとそんなことを考えていた私。

すると辻くんが、何か言い出そうと口を開きかけて。

だけどもそれを、少し強く吹いた風がさえぎった。



「わ……っ」



風にもてあそばれて乱れた髪が、視界を邪魔する。

ふ、とまた辻くんが小さく笑って、私の髪の毛に手をのばした。



「蓮見、髪が──」
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