偽善愛で夢を見て。


腕を捕まれて、引っ張られる。
重心が急に移動させられてバランスが崩れる。

まるで、私から抱きついたように紅の腕の中に引き込まれた。


「やっぱその子、紅さんの彼女さんっすか?」

彼女?私が?
変なこと言ってると殴られるよ?
紅に。


「そんなとこ。て事だから一時間はここ開けねぇ。いいな?」

いいな、じゃないよ。
不良も、はい、じゃない。


私の意見は?
異議を唱えようとした私。
顔を上げたのと同時に扉が閉められて鍵がかかる音がした。

まさか、と扉に駆け寄る。
ドアノブを回す。
動かないノブに焦る、焦る。




ここから出して!

叫んだ私、煩いと一喝された。
それで黙る程、潔くない。

扉を叩く。出して!と叫ぶ。
机の上の灰皿を扉にぶつけてやった。
ガラス製だったのか、砕け散る破片。
紅にもかかる。


痛ぇ、と呟く声に彼を見る。

息を飲んだ。






血だ。血が流れている。

人が、死ぬ。













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