裏面ワールドトリップ
しょうがない。


こうなったらもうヤケクソだ。


それに、いずれ一国を背負って立つお姫様と失業中の三十路女とでは、どちらの命がより大事かを考えれば――。



レニー少尉は何か言いたそうな顔をしたが、私は彼が二の句を継ぐ前にお姫様に向き直って言った。


「さ、急いで着替えましょう。

レニー少尉、すみませんが少しの間、向こうへ行っててもらえますか?」




私もお姫様も同じような体型だったので、私がドレスを着るのはそれほど難しくなかった。



「お姫様、この白いドレスって、ひょっとして……」


「家に代々伝わる婚礼衣装です」



やっぱり。


私に最も縁の無い衣装を、まさかこんな形で着る事になるとは。



「じゃあ、なるべく汚さないように気を付けますね」


「すみません。お手数掛けます」
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