私たち。
二人が高校生の時の事だ。

「あんた、駿先輩と付き合ってんの?」
麻友は、学校へいくといつもなら目も合わせないような派手なグループに話しかけられた。
いわゆる、呼び出しというものだ。
麻友は今までそんな経験がなかったので、空き教室に来てからというもの、ずっと怯えていた。
早く、帰りたいなぁ…。
そんなことを思う。
でも、そんな淡い期待が叶うことはなかった。
ガラガラっと音がした後、重いドアを開けて入ってきたのは、麻友の親友の、────
「愛花?!」
愛花が入ってきてから私の前へ来るあいだ、周りの子はクスクス笑っていた。
「なっ、、、
愛花、どうしたの?」
驚きだった。
何故、愛花がここにいるのか。
何故、私は呼び出されたのか。
「あんたさぁ、本当に思い当たることないの?」
「えっ?!」
ビックリして、声が裏返ってしまった。
「駿先輩だよ」
「全く。
まず、私があんな人気な先輩と釣り合うわけないので」
本心だった。
駿先輩は、学年問わず女子からも男子からも人気な先輩。
私みたいな、ましてや後輩と、付き合うわけがない。
なのに、なんで子の人たちは誤解してるのだろう。
先輩に、直接聞けばいいのに。
「あんた、愛花が先輩に本気なの、知ってて手ぇだしたんでしょ?」
「そ、そんなわけないっっ
......です」
「酷いよ、麻友」
「ちがっっ」
違う。
愛花が先輩を好きなのは知ってるよ。
だから、私じゃない。
駿先輩と、付き合ってなんかない。
「誤解だよ
愛花、信じて」
「信じてたよ、
信じてたのに」
親友だから、
愛花はそう、つけ足した。
信じてた。
信じてる、とは違う。
過去形。
今は?
今は私を、信じてくれないの?
「親友だと、思ってたのに」
私は今も、思ってるよ。
私達は親友だって。
だから、信じてよ。
「愛花...。」
「愛花が信じるわけないじゃん」
「えっ?!
な、なんでよ」
「証拠、
ないわけないでしょ」
嘘っっ。
証拠なんて、あるわけない。
だって、本当に先輩とは付き合ってないのだから。
なのに、なんの証拠があるというのか。
そんなことを考えていると、派手グループの一人がスマホを出してきた。
「ほら」
言われて画面をみてみると一組の男女が向かい合って、楽しそうな笑顔をで話ながら歩いている画像があった。
「コレ...」
......私?!
なんで?
この時、委員会のことで委員長の先輩と話してた。
でも、周りにこのグループの人達なんていなかったのに。
「コレがあってもまだバックレる気?」
「違う!!
コレは、委員会のことでっっ」
その時、愛花が泣き出した。
隣にいた一人が、愛花の肩を抱いたことでその場の空気が急激に冷えていく。
どうして?
麻友は未だ、状況が掴めないでいた。
呆然と立ち尽くす私をよそに、派手グループは愛花と空き教室を後にした。
「な...んで?」
私の疑問の言葉が教室にこだますのと同時に、私は床に膝をつき倒れ込んだ。
派手グループを敵にまわした事よりも、親友である愛花から信じてもらえなかった事の方が辛かった。
悲しみと虚しさだけが、私の心を埋め尽くした。
私の目からは一筋の涙が流れ、頬を伝った。
水滴は速度を落とすことなく、床にこぼれ落ちた。
麻友は絶望していた。
1時間目の開始を告げるチャイムの音すら、麻友の耳には届いていなかった。
それくらい、愛花の存在は大きかった。
こんな形で親友を失った麻友の精神的ダメージは、大切な人を失った事のない人には想像もつかない程だろう。
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