不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 「あっ、あっー!?」
俺は大きな声を張り上げて、男に戻っていた。


「えっ何? 何!?」


「今の何!?」

店内が急に騒がしくなった。


(――あ、ヤバい!?)

そう思っても後の祭りだった。


木暮も俺の態度に目をひん剥き、声も出ないほど驚いていた。
俺は我に返り、慌てて木暮を連れて外へと飛び出した。


店内中に、男子禁制の女子会に潜入したことがバレバレになる。
それでも俺はそうさずにはいられなかったのだ。



 店の前で叔父さんの車を探した。
急いで其処から離れたかったのだ。


でもこんな時に限って見つからない。
俺は途方に暮れて地べたに座り込んだ。


其処へやっと叔父さんの車がやって来た。
俺はガタガタ震えながら車に乗り込んだ。




 「叔父さん悪い。警察に行って!!」
俺は声を張り上げた。


「そんな格好で行ける訳ないだろう!! それとも退学になりたいんか!?」

珍しく叔父さんが怒鳴っていた。


「彼処には同僚もいるんだ。少しは冷静になれ。瑞穂、今は駄目だ。一旦家に帰ろう」
その後で叔父さんは俺は諭すように言った。

でも俺は聞く耳を持っていなかった。
俺は暴れた。


「木暮君、何をしてる。瑞穂を押さえて」
そう言われ、木暮は俺の体を抱き締めた。


木暮のカツラが鼻を擽る。


その瞬間、みずほを思い出した。
俺は堪らなくなり、木暮に抱き付いていた。




 「気持ちワルー」
木暮が頭を振っている。
それでも、しっかり抱いていてくれた。


ふと我に返る。
傍では木暮が心配そうに覗き込んでいた。


アパートの小さな風呂に木暮と二人で入る。

背中合わせに入ったバスタブから湯が溢れ、少しずつ癒されていく。

小窓から外を見ると、あの日と同じように月が照らしていた。
涙と寒気と恐怖。
それでも、それらが交互に俺に襲いかかってくる。




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