不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 あの日。
俺に送られてきた羅列のメルアド。
その相手の携帯へ。

でも俺だって考えた。
メルアドなんて幾らでも変えられると……


だから掛けてみようと思った……

少しは、少し位は良心があるはずだと思って。


――岩城みずほが学校の屋上から飛び降り自殺したらしいよ――

俺はメールをそのまま送信者に戻した。


ピコピコ携帯がなる。
驚いたことにその受信相手は先生だった。


先生は上着のポケットから携帯を取り出し、首を傾げていた。




 「ったく先生かよー」

俺は毒づいた。


でも先生はキョトンとしていた。


「ん!? この携帯誰んだ……ったく誰だ? こんな悪戯して」


(――えっ!

俺は……
その言葉にマジで驚いていた。


先生の携帯が鳴った時、実は俺はホッとしていた。

先生が俺を気遣ってメールを送ってくれたのかと思ったからだった。


だからタメ口で……
だから軽い状態っぽく言えたのだった。


(――あ、そうだ)

俺は思い出していた。


(――確か……
先生の携帯は、俺と同じように胸ポケットにあったんだ。

――確か今……
先生は上着のポケットから取り出していた)




 その携帯は本当に先生のではなかった。
きっと誰かが処分に困って先生のポケットに入れたのだろう。


でも俺は嬉しかった。
メルアドが変更されていないことが……

善意の第三者かも知れないと思ったからだった。


(――あれっ!?
でも何で俺のメルアドにアクセス出来たのだろう?

――それに……
自分の携帯を先生のポケットに普通いれるかな?)

俺に新たな疑問が湧いた。


先生の言った悪戯とは、ポケットの中に入れたことと、メールの内容だった。


「先生を貶めようとしたのは誰だ?」




 「スイマセン。メールを送ったのは俺です。名前がなかったから誰がくれたのかと思いまして」


「そうか、それなら仕方ないか……って仕方ない訳がない!」

先生はそう言った後マジな顔になって、全員を見回した。


「なあみんなどうした? クラスメートが此処から突き落とされて殺されたんだよ。何で正直に話してくれないんだ」


先生はその答えを暫く待っていた。
でも誰も名乗り出てはくれなかった。


「良し、それならリダイアルだ」

先生は溜め息を吐きながら携帯をいじっていた。



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