不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 ――ガラーン。ガラーン。

掛かって来たのは俺の携帯だった。


(――えっ!?)

それはみずほの携帯からのみの着信音だった。


「先生その携帯みずほのです!」
俺は思わず叫んでいた。




 すっかり忘れていたみずほの携帯。


『助けてー!』
の後のメールは、同じ携帯からだったのだ。


誰かがメルアドを変えて送ってきたのだ。

其処から見えた計画性。


それはみずほは間違えて殺されたのではないことを証明していた。


(――何が善意の第三者だ!!)

俺は自分自身の愚かな考えを呪った。


(――みずほ許してくれー!!)
俺は献花に目を遣りながらみずほに謝った。


俺はあの日の光景を思い出した。

あの献花の場所から見上げた屋上。

あの日この場所でみずほを平然と眺めていたクラスメートの顔を思い出した。
口角を上げ、微笑みを浮かべていたクラスメート達を……


(――あれこそが殺意そのものだったんだ!!)




 俺はもう一度コンパクトの文字を見つめた。


あの日試した鏡面回顧。
もう一度やってみるしかないようだった。


俺はこっそり陰でコンパクトを開け、あの文字を見つめた。


その途端に又閉めた。

鏡面に邪悪な何が取り憑いたような圧倒的な力を感じたからだった。


コンパクトは力を増していた。

死化粧を……みずほの最期の化粧を……俺はみずほの顔をこのコンパクトで飾った。


俺の思いとみずほの思い。

そして死化粧をしてくれた納棺師の思いが一つになって……


でも本当にそれだけだったのか?


それなら良いのだが。


俺は垣間見た邪悪な何かがとても恐ろしくて仕方なくなった。


(――それともみずほの魂が悪霊になったのだろうか?)

あんな恐ろしい目に合わされたのだ、それもあり得ると俺は思っていた。




 「キューピット様を遣った事は解ってる」

俺の言葉を聞いて、鏡の中で遊んでいた数人の女生徒が俯いた。


「殺ったのはお前達か!?」
女生徒の仕草を見て気付いた男子生徒が言い出した。


「なら俺はカンケーねえよな」

一人の生徒が立ち上がった。


「じゃあ俺は帰る。勝手に犯人探しでもしてな」
そう言いながら男子生徒が屋上のドアを開けた。


「そんじゃ俺達も関係ねえから帰るわ」



「それじゃ私達も」
みんなそう言って帰って行く。


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