不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
俺と叔父さん
 探偵事務所と言っても、そんなに格好いいものじゃない。


普通のアパートだし、狭いし。

でも熱いハートで事件解決します。
と、言いたい。

なのに来る仕事は、浮気の調査が殆ど。


だから尚更、此処でアルバイトしてるなんて言えやしない。


これが内緒にしている本当の理由。

第一。
ラブホの見張りや出入りなどを知られたら、即退学ものだから。


ウチの高校。
やたらと校則に厳しくて、今まで何人も退学を食らっているんだ。


だから幾ら叔父さんの手伝いのためだって言っても、聞く耳持ってくれないと思ったんだ。




 俺は叔父さんと組んで、ヤバい橋も渡って来た。

女装などもしてきた。


最近やっと百六十センチを越えた。

これは男子中学生の平均身長らしい。


男としては背が低く、髭もそんなに濃くない俺。

だからルージュとウィッグだけでそれなりに見えるらしい。

そんなこともあって、叔父さんは面白がって俺で遊ぶ。


女生徒の化粧だって校則では禁止している。


なのに男の俺が……


もし学校にバレたら……

そう考えただけでも怖い。

怖過ぎる!




 でも叔父さんは仕事だけは容赦しなかった。

俺の女装は、叔父さんの恋人役を演じるためだった。


俺だってイヤだよ。
幾ら叔父さんの頼みでも。


でもそれらはみんな証拠写真や資料を得るのに必要だったんだ。
だから仕方無く引き受けたんだ。


俺は叔父さんから、探偵としてのイロハを叩き込まれたのだった。


『サッカーなんか辞めてずっと手伝ってくれ』
叔父さんはことある毎に言っていた。


でも俺からサッカーを取り上げたら、何も残らない。
みずほ以外何も……


そうなんだ。
俺にとってみずほは、何物にも代えられない宝物だったんだ……




 担任の先生と生徒の母親との浮気現場に出くわした時はド肝を抜かれた。

女装がバレたらただじゃ済まない。
そう思った。


でもそれは取り越し苦労だったようだ。

先生は何事もないような素振りで、個室に消えていった。

女性はグレーのスーツを着ていた。

俺の同級生の母親には見えない位若かった。


先生は紺の上下。

目立たない服装は後ろめたいからなのか?


だから俺はその事実を利用しようと考えた。




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