不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 俺はみずほに心を残したまま出発していた。


だからなのか。
あいつの唇の温もりが……

まだ……
俺の唇を覆っている。


あいつの悪戯っぽい仕草の裏に隠された、俺への恋心が痛かった。


(――俺にそんな価値があるのだろうか?

――こんなに愛されても良いのだろうか?)

ずっとそう思っていた。


だからこそみずほに相応しい人間になろうとしていたんだ。


俺の方から惚れたのに、今じゃみずほに先を越された感がある。


サッカーとアルバイトて忙しい俺に、親身になって勉強を教えたりしてくれた。

みずほは俺にとって掛け替えのないパートナーになるはずだった。


(――あの時。
何かがあったと何故思わなかったんだ。

――みずほはあんなに俺を見つめていたのに!!

――もしかしたら俺に助けを求めいたのかもしれないのに……

――何故あの時気付かなかったんだ!!)

俺は自分自身に怒りの矛先を向けていた。




 (――だから自殺なんて有り得ない!

――そう思わせてくれ。

――きっと事故だ!

――あいつが自殺することだけは、絶対にない……

――あいつが俺に何も言わないで突然逝くはずがない!

――逝くはずがないんだ!!)


あいつとの思い出が浮かんでくる。

どうしようもなく愛しくなる。

あいつの存在がこの世から消える……
そんなこと……

あってたまるか!




 (――もしかしたら殺し?)

そんな疑問がよぎる。


実は俺……
叔父さんの経営している探偵事務所で、学校にも恋人にも内緒でアルバイトしている。

だからそんな考えが浮かぶのだろうか?


(――もしそうだとしたら、犯人は誰だ?)

俺は遣ってはいけないこと思いつつ、一人一人の同級生の顔を思い出していた。


(――同級生か?

――それとも……)

脳みそバーンと遣られた俺は、何が何だか解らず、ただがむしゃらに学校へと急いだ。



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