不完全な完全犯罪・霊感探偵瑞穂誕生【完全版】
 (――スキンヘッドには今なって来たのだろうか?)

それはあまりにも見事な剃りっぷりだった。


(――それにしてもこんなツルツル頭見たことないな。

――きっと腕のいい床屋さんなんだろうな?)

俺はソイツの頭を見ながらしきりに感心していた。


俺が見ているのに彼は気付き、頭に手をやった。

でもソイツは妙なことを言った。


「あぁ、これ? さっき気が付いたらこんな頭になっていたんだよ」
と――。


(――えっ、嘘だろ?

――嘘に決まっている)


俺はそう思っていた。
第一、知らない間にそんな頭になっていたとしたら怖すぎる!?


(――でも、もしかしたら本当かもな?)

そう……
ソイツの怖がり方が尋常ではなかったのだ。

それは単なる寒いだけではなさそうだ。
確かにこの時期にはなりたくない頭だった。




 (――何かあったのかな?

――悪い話じゃなけりゃ良いけど)

俺はそう思いながら、ソイツを見つめた。


「スイマセン……、此処探偵事務所ですよね?」

部屋の中をキョロキョロと見回しながらやっとソイツは言った。

最初は挙動不審者かもと思った。
でもソイツは尚もしきりに頭を下げていた。

俺の眼にはツルツル頭には似合わない真面目そうなヤツに写った。


(――コイツ案外いいヤツかも?)
身なりから想像した人物とはかなりギャップのある若者だと俺は思った。

若者……
歳は俺くらい……
いや、もう少し上なのかな?


(――あれっ……コイツどっかで見た?

――それとも知り合い?

――でもこんなヤツ居たかなー?)
俺は首を傾げながら、似合わないスキンヘッドの男性をずっと見つめ続けていた。




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