ストロベリーショートケーキ
──『花井 要』。この学校で彼のことを知らない生徒と先生は、まずいないだろう。

おそらく180㎝を優に越える高い身長。

常に鋭く研ぎ澄まされた目付き。

完全に違反な着崩された制服。

攻撃的な雰囲気。

いつも体のどこかしこに貼られている絆創膏。

オマケにどっかの族の総長やってるとか、父親はダークな金融機関を牛耳るトップだとか。

そんな血生臭いウワサが絶えない、おそらくこの学校イチのザ・不良と呼ぶに相応しい生徒なのだ。



「…………」

「…………」



スタスタと前を歩く彼──花井くんとあたしは、見事なまでに無言で足を進めていた。

花井くんがどこへ向かっているのかは知らないが、あたしの頭の中は内心ぐるぐるのぐちゃぐちゃだ。

有名な不良である彼とどうして今こんな状況になっているのか、平凡にフツーに毎日を過ごしてるあたしには、まったく心当たりが思いつかない。
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