ストロベリーショートケーキ
「ごめん、佐倉」

「う、ううん」

「……戻るか」

「う、うん」



そうしてベンチから立ち上がった彼の斜め後ろを、あたしはぼんやりしながら付いて行く。

そ、そうだよね……"付き合ってる"ということは、こういうスキンシップも当たり前ということで。

別に、こんなふうに身構えること、ないんだよね。


無言で先を行く花井くんの背中を見ながら、まだ彼に触れられた感触が残る頬を、そっと撫でる。

花井くんは、あたしにはっきり言葉で。

……すき、って言うつもり、ないのかな。



「………」



――もし彼が、すきだって、言ってくれたら。

本当の彼を知った今なら、迷わず「あたしもだよ」って、返せるのにな。
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