竜の唄

「ぬあ~っ! やっぱり近距離戦は無理ぃ~!! しかもイアンとかぁ!!」



喚き悔しがるカノンを無理矢理整列させ、演習は一瞬で終わった。

イヴもリアスも目くばせをして、そんな気はしてたけど、と苦笑する。


そうして一段落し、ふいー、とどこか誇らしげに息を吐いたイアンは、くるりとロゼに向き直ってにっこりと明るい笑顔を向けた。



「ロゼありがとな! すごかった!」

「えっ!? そ、そんな、ううん」



イアンが強かったから、と顔を真っ赤にしながら言うロゼの尻すぼみになる言葉に、いやいやと首を振り、イアンは頭を掻く。



「俺いっつも考えないで突っ込むからさ。あの土の壁、助かった」

「…私が出さなかったらどうするつもりだったの?」

「さあ」



押さえたモン勝ちだと思って、とへらりと笑うイアンに、ロゼは眩暈がしたような気がした。

そんな無茶な。


この先を予想して、天才少女は頭が痛くなる思いだった。




「フィオーレはもう連携の取り方もわかったみたいだが、イアンが問題だな。お前は一人で突っ切りすぎだ」



同じことをやはり教師陣も思ったのか、リアスが教壇の上から厳しい声を降らす。

うっ、と苦い顔をしたイアンは、師匠を見上げ眉を下げた。




「今後体で覚える…」

「ちったぁ考えろ馬鹿」

「そんな頭が俺にあると思いますかセンセイ」

「思わねえがやれ」



まずは心がけが大事だ!!


そう高らかに言い放ち鼻で笑ったリアスに、イアンはちぇっと唇を尖らせ少し拗ねた。




はじめての演習はロゼにとっては大成功。


だがイアンにとっては改めて突きつけられた課題となって終わったのだった。



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