きみと泳ぐ、夏色の明日


1限目の授業は地理だった。

大きな世界地図を広げて先生が説明しているけど、私の頭はそれどころじゃない。


どうして遠ざけたいものに限って関わらなきゃいけない機会が増えていくのだろう。

たまに神様がわざとしてるんじゃないかって思うほどに。

結局、授業は全然頭に入ってこなくて、あっという間に1限目が終わってしまった。


「今日の日直の人はこれを教材室に戻しておいてくれ」

世界地図に地球儀と持ちづらそうなものばかり。

日直の人はお気の毒にって……。


「すず、今日日直だよ」

「え?」

紗香に言われてやっと黒板の日直の欄に自分の名前が書かれていることに気づいた。

月に1回まわってくる日直がなんで今日なの。朝から本当にイヤなことばっかりだ。


「手伝おうか?」

「………」

私はチラッと寝ている須賀を見た。

日直は隣の席の人とペアだから私は須賀と。

須賀が日直をやってるところなんて見たことないし。みんなからちやほやされて本当に甘やかせすぎ。


「ちょっと。あの大きい世界地図持って」

私はそう言って須賀の体を揺さぶった。


私はみんなと違って須賀に甘くないから。私だけ日直の仕事をやるなんて不公平だ。


「ん?世界地図?」

起こされて不機嫌そうだけど、そんなのは知らない。


「そう。教材室に運ぶの。だから早く立って」

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