後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「……気苦労が絶えないのよ。なかなかそれを発散する場もなくて――精神的に疲れているの」

 ――嘘つけ! とこの場に居合わせた三人の侍女たちは心の中で同時につぶやいた。毎晩のように飲み歩いているくせに。

「午前中はのんびりするわ。午後は家庭教師たちと――一週間ほど滞在予定よ。朝の乗馬もいいわね」
「かしこまりました」

 屋敷に仕える者たちに指示を出すために、ここで家令は退室する。

「さてと」

 エリーシャは家令が出て行くのを見送って、侍女たちに荷物を解くように命じる。身体を締め付けない、ゆったりした衣服が多い。

 エリーシャが使う部屋は、屋敷で一番いい部屋だった。城の部屋と同様、侍女たちの控え室がついている。

 先に使いを走らせてあったから、城と同じようにエリーシャの部屋にはもう一つベッドが用意されていた。アイラはここで眠ることになる。

「さーて、温泉、温泉!」

 別荘の地下には、直接温泉を引き込んだ浴室がある。そこに行くと、エリーシャは入浴着を出すように命じた。
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