後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 浴室は、地下に自然にできた洞窟を利用して作られていた。天井にはいくつか光を取り入れるための穴があけられていて、そこにはさまざまな色合いのガラスがはめ込まれている。

「後であなたたちも使うといいわ」

 入浴着をまとって、ざばざばとお湯の中に進みながらエリーシャは言った。

「ここのお湯、疲労回復にいいって言うんだけどそれ以上に肌がつるつるになるんだから」
「ありがとうございます」

 入浴を手伝っていたファナが侍女一同を代表して返した。

「それで、本当の目的は何なのですか、エリーシャ様?」

 長湯を終えたエリーシャに、簡素なドレスを着せつけながらイリアがたずねる。

「ただの温泉目的ではないですよね? どなたかにご面会のご予定でも?」

 使い終えたタオルを畳んでいたアイラは、意味がわからずきょとんとした顔でイリアとエリーシャを交互に見た。

「うん、人にも会うんだけどね――やっぱり後宮は息苦しくて」

 珍しくエリーシャは深々とため息をつく。それから、勢いよく立ち上がると元気よく「お酒!」と命じたのだった。
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