後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
逃亡の果てに
「フェラン、先に行け」

 追っ手たちが近づいてくると、ライナスは剣を抜いた。

「ここは俺が引き受ける」
「ライナスさ――」

 振り返りかけたアイラを引きずるようにして、フェランは先を急いだ。

「振り返るんじゃない」

 フェランは、厳しい声音でアイラに言う。

「でも――!」
「今の俺たちは『皇女殿下』を、追っ手から逃がそうとしてるんだ。殿下なら何が何でも守り抜かなければならないだろ?」
「――無事に逃げられた、かしら?」

 いつまで逃げ続ければいいのだろう。アイラは木の根に足を取られて転びかける。強引にフェランに引きずり上げられた。

「大丈夫だろ。あっちには副団長がついてる」

 いつの間にか、森の奥深くに紛れ込んでいたようだった。剣を打ち合わせる音もどんどん遠のいていく。

「――少し、休むか?」
 アイラの足が動かなくなったのを見て、フェランはアイラを座らせた。
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