後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「こっちだ!」

 フェランはアイラを抱えて道ばたの藪の中に飛び込んだ。素早くアイラを立たせると、そのまま奥へと走っていく。

 岩や木の根がごろごろしている地面を、半分引きずられるようにしながらアイラはフェランの後について行った。

「ラ――ライナス――様は――?」
「ここにいる」

 少し離れたところから、落ち着いたライナスの声がした。フェランに握られている手首が痛いくらいだ。

「……どうなるの?」
「わからん」

 あいかわらず、ライナスの言葉はぶっきらぼうだ。

「大丈夫だよ、アイラ」

 フェランがささやく。

「何があっても、俺とライナスが君を守るから」

 後ろから追っ手たちの声がする。アイラは唇を噛みしめた。
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