後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「ああ、そうそう。明日からもう一人ここに侍女が入ることになってる。イヴェリンが手配してくれた魔術師が侍女としてくることになったから――」
「明日から、ですか。では控え室を一つ使えるようにしなければいけませんね」

 立ち上がりかけたイリアをエリーシャは制した。

「まだいいわ。明日の午後になるから午前中にしてくれれば」

 今日のエリーシャは、「襲撃により激しい精神的ショックを受けた」ために皇女宮に引きこもっていることになっている。実際は精神的ショックを受けているどころか、むくむくと闘志をわき上がらせているところなのだけれど。

「アイラは、医者の許可が出るまでベッドから出ないように」

 エリーシャがそう言ってくれるのはありがたかった。わき腹の傷は痛いし、頭がぐらぐらする。

 イリアが飲ませてくれた薬湯は甘くてとろりとしていた。

「それじゃ、アイラはゆっくり休んでちょうだい。イリアとファナは厨房から何か食べる物をもらってきてちょうだい」
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