後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 やがて、厨房に走らされた二人が戻ってくる。

 エリーシャがやけになっているのがわかっているらしく、二人の押してきたワゴンには十人分はあるのではないかと思われるほどの食べ物が満載だった。

「アイラ、何か食べたい物はある?」

 食欲はなかったから、アイラは首を横に振る。床に座っていたエリーシャがぴょんと立ち上がった。

「それじゃ、わたしたちは居間に移動しましょ」

 かたかたとワゴンを押す音が居間の方へと遠くなっていく。アイラはエリーシャの気遣いに感謝しながら天井を見上げた。

 イリアのくれた薬湯のおかげで、わき腹の痛みは少しだけましになっている。明日にはもう少しましになればいいけれど。

 これから先のことは頭から追い払う。先のことを考えれば不安になるから。
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