後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「下級貴族、ね。うまいところついてくるわ」

 エリーシャは組んだ手に顎を乗せて考え込んだ。

「下級貴族はうじゃうじゃいるものね。貴族って身分だけで保障はされているけれど、実際はどうだか――」
「そういうことですよ。そして、こちらの国内に入ってからは、レヴァレンド公爵家が後見人となっている――あまり表沙汰にはなっていませんがね」
「当たり前でしょ!」

 エリーシャの声音はきつい。

「タラゴナ貴族ともあろうものが、口寄せの巫女なんていかがわしい者に堂々と関わられては困るわ!」

 ジェンセンはエリーシャに同意するように、首を振った。

「――確かにそうですな。それにもう一つ理由があるのですよ」

 小さな声でジェンセンは言う。

「セシリーというのはたいそうな美女でねぇ。しかも目が見えないってんだから、同情心をそそる――まあ、演技ですがね」
「演技?」
「演技だよ。その方が、神秘性が高まるだろ? 死者の声を聞く能力と引き替えに視力を失ったというほうがね」
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