後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「呼んでくれればよかったのに――まあ、それはともかくお茶にしましょ。お砂糖は? ミルクは?」
「……ミルクをお願いします……」

 ミルクをたっぷり入れた紅茶のカップを口に運んで、アイラは息を吹きかけてさまそうとした。

「今朝焼いたの。クッキーもどうぞ」
「いただきます」

 さくっと焼けたクッキーは甘さ控えめだった。

「それでね、今日あなたを呼んだのは――」

 ぎくりとして、アイラは三つ目のクッキーに伸ばしかけた手をとめる。

「エリーシャ様の影武者として、やってもらいたいことがあるからなのよ」
「――影武者、として?」
「そうよ。影武者として」

 アイラはしかめっ面になった。アイラが後宮にいるのには、影武者としての役割もあるのだけれど、アイラを保護する意味もあったのではないだろうか。

「バカね」

 アイラの表情で気づいたらしく、ゴンゾルフは笑った。
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