後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 アイラは黙り込んでしまった。

「――エリーシャ様にご報告だ。相手が侯爵家ではわたしたちの判断だけで動くことはできぬからな」

 イヴェリンは、従僕を使いに走らせて、皇女宮からエリーシャの侍女たちを呼びつける――アイラはエリーシャに見せかけているからだ。

 そうして、アイラに侍女たちを従わせて皇女宮に戻る時、イヴェリンも同行してエリーシャの部屋へと入った。

「何かあった?」

 ベリンダと一緒に図書室にした部屋で魔術書を広げていたエリーシャは、額に皺を寄せていた。

 アイラの報告を聞くと、うーんとうなって首を捻る。

「あれはただのバカだと思っていたんだけどねぇ」

 エリーシャの見立ても変わらなかった。レヴァレンド家の長男は、とるに足らない男――そう思っていたのは見込み違いだったのだろうか。

「……どうします?」
「この国は、どうなろうとしているのかしらねぇ」

 エリーシャは深刻な顔でため息をついた。彼女がこういう顔をするのは非常に珍しいことだ。
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