後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「イヴェリン」

 エリーシャは近衛騎士団の副団長に鋭い視線を向けた。

「――セシリー教団の調査はどうなってる?」
「……はかばかしくありません」

 イヴェリンの報告に、エリーシャはただうなずいた。

「――難しいわね。とりあえず、調査を進めてちょうだい。後はこれから考えるから」

 アイラは、エリーシャの服を脱いで侍女のお仕着せへと着替えた。それからエリーシャのいる図書室へと戻る。

 その時にはイヴェリンは自分の部屋へと戻っていて、他の侍女たちは図書室から出されていたから、残っているのはベリンダとエリーシャだけだった。

「エリーシャ様、お話したいことがあるんですけど――内密に」

 エリーシャが目配せするまでもなく、ベリンダもまた図書室を出る。

「会話の内容が外に漏れないように、結界を張っておくから」

 持ち前のぶっきらぼうな口調でそう言うと、するりと姿を消す。ページを繰っていた本を書棚に戻したエリーシャはアイラを見た。

「何かあったの?」

 クリスティアンに関することまでは、アイラは他の者たちの前では報告しなかった。それは、エリーシャ個人の問題だと思っていたから。
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