後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 問いかけてアイラは気づく。

 これは公式の招待状だ――ということは、アイラがエリーシャのふりをして赴くことになるだろう――と思ったのに。

「わたしが行く」

 アイラの予想に反して、エリーシャはさっさと結論を出した。

「無茶ですよ! ご自分がお命を狙われる立場だってわかってます?」
「――だから? だから何?」

 エリーシャは肩をすくめた。どうせレヴァレンド侯爵家には一度行かなければならないのだ。

「ベリンダとあなたを連れて行く――魔術師と護衛侍女連れて――ああ、あとはそうね」

 エリーシャの手の中で転がされたのは、後宮に潜り込んだアイラの父が残していった物だった。小さな青い石。

「あなたの父親にも協力をもとめようかしらね。使えるものは何だって使うのが、タラゴナ帝国家よ」

 エリーシャはにやりとして、手にした石に語りかける。
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