後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 後頭部を押さえながら、ダーシーはぼやいた。

 アイラはとっさに口を押さえて、無言で頭を下げることでダーシーに答えた。「ダーシー様ってヘンタイですね」などと口走るわけにもいかないだろう。

「それで、ダーレーン国内にあなたツテは持ってないの?」

 行儀悪く片膝を抱え込んで座ったエリーシャはダーシーにたずねる。

「ダーレーンに密偵を入れたいのだけれど、もし、あなたの信頼できる人がダーレーンにいるのなら、協力してもらいたいわ」
「あいにくと」

 ダーシーは大仰な仕草で両腕を広げて首を振る。ちょっと前までは父親に生気を吸い取られたような男だったのに、復活したとたんやたらに芝居じみた動作が目に付くようになった。

「ダーレーンに親族はおりますが、信用できるかという点になるとはなはだ疑問ですな。セシリーに協力していたのが、そちらの人間であるということを考えればなおさら」
「うぅん」

 エリーシャは大きくうなって考え込む。
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