後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「えーっと、危険なのよね? それってすごく」

 密偵なんてやったことないし、何を探ってくればいいのかもわからない。

「だからイヴェリンについていってもらうんだ。お前、剣の方もまあまあでしかないからなぁ」
「前よりはましになったけどね!」

 怪我をして寝込んでいた間は別として、それ以外は毎日エリーシャの稽古に付き合っていたのだ。

 アイラの腕も以前より格段に上達している。

「フェランとかライナスとかじゃだめなの? イヴェリン出かけちゃうと、ゴンゾルフがめんどくさいんだけど」
「一応嫁入り前の娘ですので、男の同行はご勘弁願いたいですなぁ、エリーシャ様」

 それなりに父親らしいことを言っている。ごくまれなことではあるが。

「それに、女性二人連れの方が相手も油断するでしょうしね」
「アイラの安全は保証できるの?」
「世の中には完全な保証なんてありませんよ」

 エリーシャはちらりとアイラに視線を向ける。

「わかりました。なんとかやってみます。怖いけど――イヴェリン様と一緒ならたぶん」

 イヴェリンの剣の腕は確かだ。彼女が一緒なら一人で探索に行くよりはるかに安心だろう。
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