後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「そういや、ダーシー様はどうするんです?」
「連れてきたんだから、ちゃんと面倒見るわよ。拾った子猫だって最後までちゃんと世話をしないなら返してきなさいって言われるんだから」

 あれは捨て猫なんて可愛らしいものではないだろう。とはいえ、一応エリーシャの婚約者なのだから粗略に扱うわけにもいかない。

「いや、ご病気ということになりますから、会いに行くわけにはいかないんじゃないかと。ダーシー様は、魔術研究所の方に行かれるんですよね?」

「ああ、そうか。そう言われればそうね」

「こちらまでおいでいただくわけにもいかないですよ」

 婚約者とはいえ、ここは男子禁制だ。好き勝手に出入りしているジェンセンと、皇帝からの許可を得ているゴンゾルフは別として。

「別に会わなくても寂しくないし、ぜんぜん気にしないわ」

 形だけの婚約者ではあるけれど、ちょっぴりアイラはダーシーに同情した。

「それじゃ、明日にでもイヴェリンと一緒に出かけてちょうだい」
「じゃあ、アイラ。明日出立前にもう一度会おう。パパはちょっと出かけてくるよ」
「イヴェリンを呼んで、それと路銀も必要ね。すぐに手配するから」

 ひょいとジェンセンは姿を消し、エリーシャはてきぱきと動き始めた。
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