後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
酒場にて
「お酒飲みたいですぅぅぅ」

 どうやらエリーシャと一緒にいる間に、アイラもずいぶんと酒飲みになったようだ。ウェイトレスたちの運んでいるビールのジョッキがやけにうまそうに見える。

「お前な自分の立場を考えろ」
「わかってますけどー」

 どうやらずいぶん図々しくなったようだ。イヴェリンの前で酒が飲みたいと口にできるとは。

「そんなことより――おかしいな」

 イヴェリンは眉を寄せた。

「どうしました?」
「いや、ここへ来るまでの道中、首に黄色い布を巻いた連中をやたらに見かけただろう」

「そうですね」
「この店には一人もいないんだ」

 アイラはイヴェリンの言葉に従って、店の中を見回してみた。店内には多数の人があふれているが、確かに首に黄色い布を巻き付けた者はいない。
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